KANSAI WORLD MASTERS GAMES 2021

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WMGをする人

2020/12/16

vol.06 自分でも驚くほど、今はテニスが好きです~浅越しのぶさん・テニス~

神戸市で開催された「ワールドマスターズゲームズ2021関西開催記念イベント」(2020年10月18日(日))。
トークショーに登場されたのが、1999年全日本選手権女子シングルス・ダブルスで2冠、04年カナディアン・オープン女子ダブルスで優勝、同年のアテネ五輪でベスト4、同年の全米オープンでベスト8と世界で活躍された元プロテニスプレーヤーの浅越しのぶさんです。
お話しされ始めると、まぁ、なんと明るいこと!まさに“はつらつ”という言葉がぴったりです。会場に笑いを起こしながら、現役時代のテニスから、今の趣味のテニス、お子さんのテニス…と、テニスとの関わり方の変遷をお話されました。

ツアー生活は“辛かった”。
引退後に海外へ行くと「あれ?海外って楽しいんだ」って

清水 浅越さんは兵庫県上郡町のご出身なんですね。
浅越 そうなんです、生まれも育ちも兵庫県です。今日の会場のハーバーランドは毎週のように来ている、庭みたいな場所ですよ。
清水 2006年に現役を引退されたということは、もう14年ほど前のことですか。
浅越 もう現役から離れて長いんですけれど、内容の濃い現役生活だったので、ほんとうに、つい最近のことのように思い出せます。昨年、13年ぶりにグランドスラムにオーストラリアとフランスに行って、今年も行く予定だったんですけど・・・今年がまさかこんな年になるなんて。

清水 そもそもですが、テニスを始めるきっかけは、何だったんですか?
浅越 小学校4年生の時に「エースをねらえ!」っていうテニス漫画が流行っていて、「主人公の岡ひろみになりたいな」って思って。漫画は硬式テニスなんですけど、当時、地元には軟式のクラブしかなく…。でも、「同じテニスだしな」と思って、軟式から始めました。
清水 へぇ!漫画がきっかけだったんですね。
浅越 はい。漫画は「ウィンブルドンに出る」っていうストーリーだったんですけど、軟式テニスにはウィンブルドンはなく、その後、中学校から軟式から硬式に変更しました。地元を離れて尼崎の中学校へ進んで、寮に入っていたんですけど、もう、テニス漬けの毎日で、そこからテニス1本でがんばってきましたね。
清水 競技生活のなかで、一番思い出されることは、どんなことですか。
浅越 「プロテニス選手として、ツアー生活ってどうだった?」って、よく聞かれるんですけど、うれしかったことよりも、辛かったことの方が強く印象に残っています。全日本で優勝したり、五輪にも出させてもらったり…大きな試合には出てきたんですけど、「辛かったな」っていうのが一番の印象です。
清水 そうなんですね。
浅越 ツアー生活も、そんなに得意というか好きではなくて、外国に行って試合するのが苦痛に感じる時もありました。引退してから初めて海外へ行ったのが新婚旅行で、その時に初めて、「海外ってこんなに楽しいんや」って知りました。
清水 えぇっ!そうです、海外旅行って楽しいんです(笑)。
浅越 今は、以前とは違って、海外も楽しめるようになりました。

 

私にとって、テニスは出会いそのもの

清水 振り返ってみて、浅越さんにとってテニスはどういうものですか。
浅越 “私のテニスは、人との出会いです”といつも言っています。学生時代の監督、先輩・後輩、指導者、トレーナーさん、それから、応援してくださるみなさん-。テニスを通して、すご~くたくさんの方に支えてもらってきたので、私のテニス=出会いです。
清水 なるほど。
浅越 自分が「テニス1本でいこう」思った時に、私の周りにいてくださる方で、私にとってマイナスな方って1人もいないくらい、みんなが支えてくれて、みんなが励ましてくれたので、今もすごく感謝していますね。
清水 そういう出会いに恵まれるってことは、浅越さんにも、きっと求心力があるんだと思います。
浅越 そう言ってくださると、とてもうれしいです。

清水 プロスポーツとは少し違って、WMGは楽しみながら続ける生涯スポーツの大会ですが、現役と今とで、テニスとの付き合い方は変わりましたか。
浅越 ずいぶん変わりました。競技って、文字通り、技を競うので、例え惜しい試合でも負けると誰も褒めてくれない。やっぱり、勝ちが全て、結果が全てっていうところがありましたけど、今は、テニスコートに行くこと自体が楽しいです。
清水 ということは、今も、テニスはされてるんですね。
浅越 はい。今は、たまに後輩の指導とかテニスイベントに行かせてもらうんですけど、その日は朝から、「今日はテニスがんばろう」ってウキウキしてるので、そこが、競技してる時とは全然違います。競技している時は、1年365日、常にピリピリしていて、鋭い刃物みたいな感じだったんですけど(笑)、今はテニスをするのが楽しみでしょうがないです。
清水 へぇ、いいですね。

 

目標ができると普段の生活が元気になる
それがスポーツの良さだと思います

清水 スポーツをする良さって、どんなところですか。
浅越 私、2年前にトライアスロンに挑戦したんですけど、それまでテニス1本だったので、まずはクロールのやり方、次に自転車のこぎ方とか教わっている時に、「大人になってから教わるって楽しいな」と感じました。小さい頃から習っているスポーツとはまた別物で、「あ、楽しいな、スポーツって」という再発見がありました。
清水 でも、まさかの、トライアスロンでしたが…(笑)。
浅越 そうですね、楽しいとはいえ、めちゃくちゃしんどかったです。でも、何か目標を持つと、それに向かって、「こうしよう」「あれしたい」とプランを立てるじゃないですか。「子どもが○○時に帰ってくるから、この時間に、ご飯作んなきゃ」っていう家事もあるんですけど、そこにプラス何か「今日は水泳練習もしよう」と自分の目標が加わると、ご飯を作るのも楽しかったりするんです。
清水 そうなりますか!
浅越 はい。目標ができると、普段の生活も元気に過ごせますね。私の知り合いでは、テニスを朝の出勤前にされる方もいたり、仕事終わりに夜遅くからされる方もいたりするんです。「11時過ぎまでテニスやって、翌朝は普通に出勤されるの?!」っていう感じですよね。でも、みなさん決してお疲れ顔じゃなくて、仕事をやりきって、楽しみにして来られているので“スポーツを取り入れると、それが生きる糧になる”というのが、スポーツの良さじゃないかなと思います。
清水 1日のメリハリも付くし、「このためにがんばろう」っていう目標にもなるんですね。ちなみに、浅越さんの今の目標は何ですか?
浅越 「WMGにも挑戦したいな」って思ってたんですけど、私の場合、やり始めると競技になってしまいそうなんですよ。また1から体づくりをしていかなきゃいけないと思うと、今から間に合うかなぁ…。
清水 そんなに本気で始めることになってしまうんですね。
浅越 本気になっちゃいますね(笑)。負けるとやっぱり悔しいので、やるからには本気でやりたいなと。

 

自分でも驚くほど、今はテニスが好きです

清水 今日は、浅越さんのご家族のみなさんも会場に来てくださってますけど、みなさんはスポーツはどうですか。
浅越 最近、子どもがテニスを始めましたね。今は「コートに行くのが楽しい」っていうのが一番だと思うんですよ。楽しいうちは、思いっきりやってもらいたいなって。でも、ゲームを見ていると、ついアスリートの気持ちが出てきて、「もうちょっと、試合運び、なんとかならへんの?!」とか思ってしまうこともあります。「陰から見守っている方がいいかな」とは思ってるんですけど…。ただ、子どもたちには「やるからには真剣にやりなさい」とは伝えてます。これが、二世のむずかしさなのかなとも思ったりしてます。
清水 二世のむずかしさ、ですか。
浅越 親がプロでやってると、つい、「子どももきっと同じようにできる」と思って言いがちなんですけど、そうでなくて、階段を一段ずつ登らすってことが大事なのかなと。でも、やっぱり、一番は“好きこそものの上手なれ”なので、楽しんでやってもらいたいなと思っています。でも、練習中に砂遊びとかし出した時は、「それは、やめなさい!」とは言いますけどね。

 

 

清水 好きこそものの上手なれと言われましたが、浅越さんは、今、テニスは好きですか?
浅越 今ね、すっごく好きなんですよ。自分でもびっくりしてるくらい。私は、25歳の時にスランプに陥って、「もう、テニスを辞めたい」って、1カ月ほどラケットを置いてたことがあったんです。でも、「私にはテニスしかない」って思い直して、そこから全米オープンでベスト8に入ったり、いろいろな大会で勝てるようにもなって。私の競技生活のピークは27歳くらいだったんですけど、「もしあの時、25歳で辞めてたら、何も残ってなかったな」って。その時の「テニスは嫌いだ」っていう思いから比べると、今は「今日はテニスや!ウキウキ!」みたいな感じなので、信じられないです。

 

関西が舞台。
出場しない方も観戦でエネルギーをもらってほしいです

清水 スポーツをする環境として兵庫県を、どう見ていらっしゃいますか。
浅越 環境はスポーツによってそれぞれでしょうし、他の競技はどうか分からないですけど、テニスをする環境はすごく整っていると思います。ジュニアの育成に力を入れているクラブもありますし、一般の方も誰でもできるテニスクラブもありますし。ただ、軟式テニスの時は月謝が安くても、硬式になると高くなって、週の回数を増やすとさらにちょっとずつ高くなるので、もうちょっと安くなると、一般的にも通わせやすいんじゃないかなと。
清水 なるほど、練習するとなるとお月謝も切実ですもんね。
浅越 あと、兵庫県はテニスコートが充実しているので、そこはありがたいですね。
清水 浅越さんは、神戸周辺で練習をされているんですか。
浅越 母校の園田学園(尼崎市)へ行ってます。後輩の指導をしたり、自分が練習に行ったり。あとは、WMGのテニス会場にもなっている、ブルボンビーンズドーム(三木市)に練習に行くこともあります。
清水 ビーンズドーム、すごくいいところですよね、屋内のコートですし。

清水 WMGでは国際大会がここ兵庫県で行われることになります。どんな期待をされていますか。
浅越 まず、参加者のみなさんが、けがなく自分の力を思いっ切り出されることが、まず第一だと思います。個人的には、いろいろな競技を見に行きたいなと思っているんです。シドニーオリンピックの時に、柔道とかテニス以外のスポーツを見に行って、他の競技を見たのが初めてだったんですけど、その時に、胸の中がすごく熱くなって、すっごい刺激をもらえたんです。なので、試合に出る方もそうでない方も、ここ関西が舞台なので、いろいろなスポーツを見に行って、刺激を自分のエネルギーに変えてもらいたいです。

 

取材を終えて

スポーツを自分の心身のためにできるということ。それは、どこか当たり前に思っていたところがありました。しかし、「勝つことが全て」という厳しいプロスポーツの世界のお話を聞くと、勝っても負けても、自分のため(だけ)にスポーツができるというのは、実は幸せなことなのだと思いました。
トークショー後、浅越さんはローンボウルズや囲碁ボールなどのスポーツ体験会に、ご家族で参加されていました。なんとなく、誰よりも浅越さんが楽しんでいらっしゃるような気も(笑)。でも、まずは“楽しんで”、そして、“好きこそものの上手なれ”なのだというメッセージはきっと、お子さんたちにも伝わっていることでしょう。

 

取材・構成 兵庫県広報専門員 清水奈緒美