KANSAI WORLD MASTERS GAMES 2021

WMGをする人

2021/06/24

vol.07「野生のイノシシ狙うよりは・・・・簡単?!」 とも言えないクレー射撃の難しさ ~米山彰彦さん・クレー射撃~

ワールドマスターズゲームズ2021関西クレー射撃競技リハーサル大会(2020年10月16日(金)~18日(日)開催)。

参加者同士、顔見知りが多いのでしょうか‥プレーの合間には、テーブルを囲んで談笑されている方もちらほらいらっしゃいます。

この大会に、娘さんと親子で出場されていた参加者が、米山彰彦さん。長野県で猟師をされています。「猟よりちょっと上をいくおもしろさ」と語るクレー射撃の奥深さを教えてくださいました。

 

 

「出る人がいないから・・」と出場した大会で優勝

清水 クレーはいつから始められたんですか。
米山 始めたのは、2010年です。11年は東日本大震災の影響で私は大会に参加できなかったんですが、銃器メーカーとか装弾メーカー主催の大会にいろいろ参加してます。
清水 メーカー主催の大会っていうものがあるんですね。(クレー射撃大会には、国際スポーツ射撃連盟の制定するルールに則った公式大会のほか、メーカー主催の大会、猟友会主催の大会などがある)。クレーを始めるきっかけは何だったんですか。

タイの実力選手と

米山 銃の免許は、20歳の時に取ってまして、長野県は猟をしている人も多いのでね。で、猟友会主催の大会があって、たまたま「出る人がいないから、出てくれ」って言われて出場したのがクレー射撃を始めるきっかけです。そしたら、その大会で勝って、次の大会に進む長野県の代表選手になっちゃって。
清水 へぇー!!!すごい。
米山 他にも、「大会に勝ったら海外大会へ行ける」っていうのに釣られて(笑)、メーカー主催の大会にいろいろ参加して、トータルで8回ほど海外に行かせていただきました。オーストラリア、シンガポール、それからタイと。向こうの人と交流試合をやらせていただいたんですけど、タイの女子スキートの代表の方とか、オーストラリアの男子代表の方とか、いろいろな人と撃たせてもらいました。そういう経験ができたので、クレーをやっててよかったかなと思います。
清水 そんなに海外大会へ行けるって…米山さん、お上手なんですね。
米山 モノがかかると強いんですよ(笑)

 

野生のイノシシ狙うよりは・・・・簡単?!
とも言えないクレー射撃の難しさ

清水 米山さんは、猟師をされているんですか?
米山 そうですね、狩猟と肉の販売をやってますから、ほぼ猟師ですかね。会社勤めは早期退職して、今は別の会社で、狩猟とイノシシや熊の肉を処理して販売してますよ。
清水 実は、兵庫県も獣害被害、かなり甚大なんですよ。(全国の農作物被害額は、長野県は11位、兵庫県は8位と長野県を上回る。『野生鳥獣による都道府県別農作物被害状況(令和元年度)』より)
米山 そうですよね。だいたい11月~2月の猟期中は、ずっと猟に出てますが、捕獲してもしても追いつかないですもん。
清水 さすがに、猟期中はクレー射撃はされないですよね。
米山 長野県の射撃場の数って、かなり多いんですけど、ほとんどが猟友会が運営してますんで、猟期には営業してなかったり、していても土日だけとかですね。

清水 猟とクレー射撃って、何がちがいますか?
米山 別物ですね。「クレーみたいに同じスピードで、同じ方向で動くものの方が、簡単じゃないか」と思っていたんですけど、これがなんでか、同じことをしているつもりでも同じようにはいきせんね。
清水 逃げる動物を捕らえる猟師さんでも難しいんですね。
米山 もし、簡単にできてしまえば、この競技は案外おもしろくないのかな。外れるから、のめり込むんだと思うんです。でも、クレー射撃にのめり込むとは思ってもみませんでした。猟を始めて30年。射撃が10年ですけど、最近、猟のおもしろさより、射撃のおもしろさの方がちょっと上いってますんで(笑)。
清水 そうなんですね(笑)。今は、練習はできていますか?
米山 コロナになってから、メーカーさんの大会も軒並み中止で、試合にも出ることも練習もほとんどないですね。

 

ある人の話をきっかけに変わった“緊張の捉え方”

清水 米山さんは、仕事でも射撃でも銃を使われて、かなり長い時間、銃と関わってこられてますよね。
米山 長くはなってきてますが、でも、一生、課題はありますよね。どんなスポーツでもそうだと思うんですけど、「何かをする」っていうと、その時間はそれに集中できるじゃないですか。集中できるのはいいですね。ただ、「人と競う」ってなると、緊張やらなんやらで集中が別の方へ行ってしまうので、これがなかなか難しい・・。
清水 試合には試合の緊張感があるんでしょうね。
米山 でも、ある人が、緊張感のことをこんな風におっしゃってたんですよ。「米山さん、何言ってるんですか!その緊張感を味わえるのは、この競技ならではなんだから。私は、その緊張感を味わいに来てるんですよ」って。その話を聞いてから、緊張がドキドキの方じゃない、集中できる方の緊張に変わっていったんです。1位を狙うってことは名誉なことなんだと。
清水 なるほど、いいですね。
米山 その精神面の持っていきようは、いろいろなことに生きますよね。私、会社は早期退職したんですけど、会社員時代にも役に立ちましたよ。
清水 年を重ねていくと、なかなか若い時のように続けられなかったりするスポーツもありますけど、クレー射撃は年齢とか関係なく、その緊張感が体験できそうなので、いいですね。
米山 そうですね。今、自分は60代前半ですけど、周りを見てると、70歳まではなんとか楽しませてもらおうかなと思ってます、緊張感やらなにやらも併せて楽しもうと。

 

 

清水 今日は、娘さんと一緒に来られているんですね。娘さんも試合に参加ですか?
米山 そうです。娘もたまたま休みが取れるっていうので、今日は参加できました。
清水 親子で大会に参加って、いいですね。WMGは参加されますか?
米山 そうですね。スキート種目なんて、特に人口少ないんで、「出ておこうかな」っと思って、今日の大会も参加してます。娘は「WMGに出たい」って言っているんで、もしかすると、娘だけ参加して、自分は運転手かもしれませんが(笑)。いろいろな方が出られると思うので、試合を見られるのは楽しみにしています。

 

取材を終えて

素人の憶測では、「動いているもの狙う方が難しいはず!」と思っていましたが、猟師歴約30年の米山さんが「難しい」と言うのですから、クレー射撃とは不思議な競技です。

自分の出場時間以外は、参加者のみなさんは、山肌や他の選手のプレーを見ながら談笑されたりしていますが、出番が来るとさっと銃を構え、「はいっ」「ハッ」と一声。(この声に反応してクレーが噴出される仕組み)。一瞬で選手の顔に変わるのが、なんともかっこいい。

いろいろなことに緊張したり物怖じしたりしなくなるのは成長だと思っていましたが、もしかすると、いくつになっても緊張する時間があるのは、そう悪いことでもないのかもしれません。

 

取材・構成 兵庫県広報専門員 清水奈緒美