WMGを作る人
2019/10/30
10月12日(土)~14日(月)県立明石公園で「第6回ローンボウルズ ジャパンオープン国際大会兼ワールドマスターズゲームズ2021関西リハーサル大会」が行われました。開会式で、司会進行をしていたのが森紘一さん。でも、ただの司会ではありません…。日本語と英語の見事な二刀流(しかも、かなりのアドリブ)で進行しているのでした。
ブロークン(でたらめ)ですけどね(笑)。これまでのローンボウルズの国際大会なんか通じて、外国の人とも嫌でもコミュニケーション取らなあかんので話しますけど、アジアの人とは英語が通じるんだけど、ネイティブとしゃべったら全然通じませんよ(笑)。勉強は特にしてなくて、高校と大学ではESSみたいなのには入っていたんですけど。まぁ、アジアの人も今は英語が話せる人も多いですからね、必要に迫られてなんとかやってるという感じです。
約30年前に仕事の関係で、名古屋から神戸に引っ越してきて。47、8歳の時かな。私は、もともとエンジニアなんですけど、輸出の業務をするのに英語も多少使うとなって、ちょっと英会話勉強しよっかなってYMCA行ってみたら、ローンボウルズやってる人と出会ったんです。で、1回やってみたら、非常におもしろくって。やり始めてすぐ大会出たら、いきなり入賞して賞品もらっちゃったんです。「あ、これは易しいな」「いいな」と思ってやりはじめたら…ところがどっこい、そうはいかなかった。今でも勝つのは容易ではないですが、そんなきっかけでやり始めました。
このスポーツはね、初心者でも取っつきやすいんです。ただ、ものすごく奥が深くって、それから30年やってるけど、未だに「これで十分極めた」っていう感じではなく、「まだまだいくらでもやることあるな」というスポーツなんです。
海外ではそこそこ知名度があるんです。もともとイギリスで生まれたスポーツですから、イギリスの統治になったような国なんかでは、ものすごい競技人口がありますからね。アジアのなかでは、マレーシアが一番進んでいるのかな。小学校でも家庭でもローンボウルズの基礎みたいなん取り入れてますし、香港は、ローンボウルズの会場が40くらいあって、大会やっても人が来る。で、前回のワールドマスターズゲームズ(WMG)のオークランド大会では、ローンボウルズは正式種目とほとんど同じ扱いでしたね。選手数も多いし、会場もたくさんの会場でやっててね。私も参加させてもらいました。
「4年後は日本でやりますよ」と言うと、「日本に行って観光もしたいし、ローンボウルズも一緒にやりたい」ということを海外の人からはいっぱい言ってもらっいましたね。国内では「ローンボウルズ?なんや?」という感じですけどね(笑)。
そもそも、このローンボウルズを日本に取り入れたのが、兵庫県の副知事さん。昭和60年代、当時の副知事さんの一谷さんいう人がオーストラリアに視察へ行った際に、どこのまちに行ってもローンボウルズ場があって、みんながやってるのを見られたと。「これは生涯スポーツとして最適だな」と思われて、明石公園に全国で初めてボウルズ場を作ったと言われています。
そこから、聖地の地位を確立しました。ローンボウルズ場って、兵庫県と横浜くらいにしかなくて、競技人口がそこまで多くないんです。「やったことがある」「知ってる」という愛好者は、全国に約2500人くらいでしょうか。なので、今始めると、いい成績が残せるチャンスとも言えます。いつも、若い人を勧誘する歌い文句がありまして、“2年やったら、日本代表!国際大会出られるよ!”と言ってます。ホテル代は大会運営者がもってくれるというとこも多いので、“海外旅行できて、海外の人とも交流が深められるから、ぜひやらんか”と。
そうなんです。ローンボウルズ日本からも働きかけて、オープン競技(正式種目ではないが、大会参加機会を増やすことを目的に実施する競技)として開催することになりました。ローンボウルズ、誰も知らないですよね。やっぱり知名度上げないと、普及もすすまない、愛好者も増えない。今日から開催のジャパンオープンというのも今回で6回目ですが、「WMGでもぜひ、やらしてほしい」とお願いしました。ただ、正式種目として開催するかの選定も「全国に組織があって」とか「競技人口がなんぼ以上で」とか、基準があったので、結果、オープン競技でならということになりました。
海外選手の対応もある程度慣れてはきていますね。「なんとかなるだろう」という気持ちはあります。ただ、今回も台風で初日の試合ができなくなって、開会式の後は急きょ、チーム対抗カラオケ大会に変更しましたが、やっぱり天候が悪いとできなくなる。
海外からせっかく呼んでるので、申し訳ないですよね。海外では、屋根つきの全天候型の競技場もあるので、欲を言えば、そういうのを作っていただけたら、雨の心配もなくなる。で、今は海外の選手とも仲間になってきてるんですね。お互い行ったり来たりしてるんでね。香港のJacky選手なんかも、香港で大会の運営をしてるんで、多少のことあっても我慢してくれる。「文句言ったら気の毒だから」と理解してくれる関係ができてきているんでね。それで、大きなトラブルもなく安心してできていますね。
選手も運営組織の人間も、我々みたいにリタイアして時間がたっぷりある人が多い。若い人がねぇ…。マレーシアなんかは、ユース育成に力を入れていて、次の世代を育てる仕組みができている。まぁ、日本はおかげ様で、いろんなスポーツがあって、あり過ぎるくらいですからね。なので、高知大学、甲南大学でもローンボウルズのクラブを作ってもらっています。ただ、せっかく始めた学生さんも卒業して仕事をすると、仕事が忙しかったりで途切れちゃう。
でも、ローンボウルズの事務局やってることで、国内はもちろん海外でもね、「森さん、森さん」みんなが言ってきてくれたりするのはよかったかなぁ。選手としてプレーするのはやっても、みんな、なかなか事務局はやりたがらない。来年私も80歳ですけど、まぁでも、おかげ様でなんとか、ボケずに認知症にならずに元気でやってます。同じ仲間内のなかでは、「どっちか早くボケた方が勝ちだなぁ」とか「ボケたらこんな(事務局の)苦労しなくて済むのに」とか言うてます(笑)。心身の健康得られてるのも、ローンボウルズのおかげですかね。
海外の人にもたくさん来てもらって盛大にやる。そして、ローンボウルズというものを日本の人にも知って欲しい。「これを機にやってみよう」という人を増やしたいです。海外の人でも、日本でローンボウルズの競技ができるのを知ってる人もまだまだ少ないと思うので知ってもらって。今で言う「スポーツツーリズム」ですよね、スポーツしながら観光に来るという世代も増えていますから、海外のお客さんを呼び込んでいきたいですね。
【ローンボウルズとは?】
・合成樹脂でできた約1.5kgのボールを転がして目標球(ジャック)に近づけることを競うゲーム。
・ペタンクやボッチャ、カーリングとも類似している。
・1エンド(1試合8~12エンド)のはじめに、ジャックを投球する。
・1エンドごとに、2つのチームがボールを交互に投げ合い、ジャックとの近さや配置などから点数を数える。
・両者が4~6球ずつ投げ終えたら、1エンド終了。1試合1時間ちょっと。
・専用コートは、幅約5.5m×長さ約35m。
・1対1(シングルス)の個人戦から、2対2(ペアーズ)、3対3(トリプルズ)、4対4(フォアーズ)のチームプレイまで。
・相手のボールをはじいたり、ブロックしたり、ジャックを移動させたりするといった戦略が必要となってくる。
ボールを投げさせてもらうと‥
カーリングのストーンを二回り小さくしたような形のボールを片手で転がします。
ただ、ボールの重心は中心からずれているので、投げてみると曲がる曲がる!
しかも、コートの芝の状態(傾きや、天然芝か人工芝かなど)によっても、ボールの転がり方が変わるので、こりゃ思っていたよりムズカシイ!
状況からボールの曲がり方を計算して、正確に目的位置まで転がすコントロール力が必要なんですね。
「森さん、お弁当が足りない~」「森さんは、この後の会食には行かないんか?」。大会中はひっきりなしに、森さんを呼ぶ声が飛んでいました。マンパワー不足でワンオペレーションに近い状態になっていたとしても(いや、なっているからなのか)、むちゃくちゃ頭の回転と行動が速い森さん。インタビュー中でも、誰かが近くを通るだけで、早撃ちのガンマンのごとき速さで反応し、声をかけたりされていました。その気配りのおかげもあってか、昼食中は海外選手も交じって和やかムード。タイと日本のカップ麺を食べ比べたり、ハラールフードやドリアンなどの話で盛り上がったりしていました。
実は森さん、2018年度の「ローンボウルズ日本選手権大会」の男子シングルスのチャンピオン。WMGでは裏方に徹するので、その実力が拝めないのが少し残念ですが、次の次のWMGでは本領発揮されることを楽しみにしています。
取材・構成 兵庫県広報専門員 清水奈緒美