KANSAI WORLD MASTERS GAMES 2021

WMGを作る人

2019/10/01

vol.01 “スポーツ”と”宍粟”を楽しんでもらうんや!~ 宍粟市波賀市民局 清水将道さん~

0からの準備。でも、こぼれ出すは・・

2019年3月。ワールドマスターズゲームズ2021関西(以下WMG)のカヌーポロ競技の開催地が、宍粟市の音水湖(おんずいこ)に決定しました。
ノウハウのノの字もないゼロから大会準備を始め、
奔走する宍粟市波賀市民局まちづくり推進課清水将道さんに、その奔走ぶりを聞いてみると、苦労話がたっぷり出てくるとかと思いきや、“なんもないけど、宍粟、自然はあるで”、“とにかく、飲んで食べて、宍粟を楽しんでもらって、また訪れてほしい―”。語る言葉には、ポロポロとおもてなしの気持ちがこぼれ出していました。

 

 

 

実は…一度お断りしていたんです

 

これは、裏話なんですが、開催地候補としての打診があった時に、市としては「そんなに大きい大会、できません」と一度はお断りをしたんですよ。結局、開催が決まった際には、「えーーー!!!まじかー!!どうするんだ」という感じです(笑)。まず、「そもそも、カヌーポロってどんな競技?(※ ページ下部 参考)」というところから調べると、愛知県みよし市と福井県あわら市に、カヌーポロの常設コートがあったので、活発にカヌーポロがなされているということで、両方の市に行って、大会運営について聞いてきました。

 

急ピッチで実行委員会を設立。目下の目標が7月の第1回大会!

 

そこから、市役所、市議会、市連合自治会、市体育協会、市スポーツ推進委員長、県カヌー協会、地元カヌークラブ…海外参加者のいるWMGでは通訳がいるので国際交流協会、音水湖が県営ダムなので西播磨県民局、国道沿いなので国土交通省姫路河川国道事務所などに協力してもらって、宍粟市実行委員会を設立しました。それが4月20日。で、その3月後の7月にWMGのリハーサルを兼ねた大会をすることが決まったので、その準備にかかることになりました。もともと、宍粟市にある県立伊和高校にはカヌー部があったり、音水湖ではカヌーのスプリント競技の大会は行っていたりしているのですが、カヌーポロは全くの初めて!さらに、海外選手の受け入れを経験しておくために、7月の大会では、海外選手を招かなくてはいけないと。で、もろもろ費用を洗い出していくと、なんと…予算オーバーで競技用具が買えないことが分かったんです。

 

 

そこで…「用具を貸してください」と直球勝負

 

で、愛知県みよし市に再度行きました。この時は、「保田ケ池カップ」という大会に、研修という形でべったり入らせてもらって運営を学んで、この時「仲良くなった」というとおかしいんですが、ある程度人間関係ができていたんで、「用具を貸してもらえませんか」とお願いしたんです。“お願いします状態”です。得点板、電光掲示板、パドル、ライフジャケット類をお借りすることができました。

 

 

そして、「さぁ、次、コートとゴールがない」ということで、お隣の岡山県カヌー協会にお願いして、コートとゴール、そして、ポロ用カヌー21艇をお借りしました。割と用具がたくさんいるんですよ。さぁ、設営の準備はできた!海外選手の招へいには、代表選手含むシンガポールチームを招いた!でも、一流選手を呼ぶのも大事なんですが、“裾野を広げて、地元の選手も育てていかないと”と思って、音水湖での第1回大会の1週間前に、開催市町PRイベントとして、誰でも参加できる「カヌーポロ体験会」というものも行ったんです。「ポロ競技しませんか~」と。伊和高カヌー部やOB、一般参加者を含め32名の参加がありました。日本カヌー連盟カヌーポロ競技運営委員会や関西でカヌーポロ競技のできる人とかに、先生になってもらって。で、その体験会に参加した人達と経験者とで、4つチームを結成して、第1回音水湖カップにも出てもらったんです。日本代表選手のいるチームとかシンガポールのチームは「一般の部」、それ以外の初心者は「トライアルの部」です。

 

シンガポールチーム

ちなみに、僕も「メイプルタウンクラブ」という地元チームに入って、トライアルの部で出たんです。すぐ(カヌーから)落ちましたけど(笑)。

 

 

戦った後は、全力で飲む!これ大事!

 

試合の後は、選手や関係者、地元の人となどで日本カヌー連盟カヌーポロ競技運営委員会主催の交流会に参加したんですよ。シンガポールの人たちも、宍粟の日本酒をがんがん飲んでましたね…日本酒から真っ先に無くなったほどです。まぁ、ゲームでは敵同士ですが、終わればとことん一緒に盛り上がる。僕は、こういう場は大事だと思ってます。

 

お酒が入ると本音が出るじゃないですか。トップクラスの選手とか、カヌー連盟の人とかといろいろ本音の話ができる。私も4か月くらいしか競技を知らないので、そういう部分が大きい。「仮設トイレがあった方がいい」とか「選手、雑魚寝でもチームは一カ所で寝られた方がいい」とか、おもしろいことを聞けるんです。「今回の、浮き桟橋の設営がすばらしい。歩けるのがいい」、「こんなきれいな湖のところはない、めちゃくちゃ水がいい、水が軽い」とうれしいことも聞きました。

 

 

そう言ってもらえると、「準備してよかったなぁ」と思いますね。まぁ、シンガポールの人との英会話は…ちょっとの単語力と、ポータブル翻訳機で。あとは、ハートでカバーです。でも、けっこうハートが大事です。

 

 

スポーツするだけがWMGじゃない

 

競技人口が少ないということもあってか、カヌーポロ、選手同士、絆が深いように思いますね。「来年、あわら市に来てね」、「また、みよし市に行くわ~」とか。「大会でなくっとも、プライベートで遊びに行くようになった」とかいう話も聞きましたし。今回の音水湖での試合もそうなんですが、奥さんやお子さん、おじいちゃん、おばあちゃん…と県外からでも家族連れで参加している人も多いんです。

 

 

だから、わざわざ宍粟市に来てくれた人には、「宍粟市、のどかだなぁ」、「こんないいところがあるんだな」と少しでも喜んでもらいたいと思いますね。なんもないとこですけど、自然はあります!日本酒発祥の地=宍粟のお酒はあります!お子さんから、おじいちゃん、おばあちゃんまでみんなで来てもらって、参加者、地元、みんなで食べましょう!飲みましょう!試合だからって、ガッチガチでなくて、みんなで盛り上がって、で、いつかまた宍粟に来てもらう。これが、僕が思うWMGの姿ですね。これからの2年をかけて、カヌーポロを地元の人にももっと知ってもらって、選手を養成して地元から盛り上げていきたいです。

 

 

リハ大会から見えてきた課題と手応え

 

今回の大会では、海外選手とカヌーの輸送を自分たちで行ったんですが、WMGではいろんな国からの選手が、別々の便で、長さ3メートルもの舟を持ってやってくる。空港からホテル、ホテルから会場までの舟の輸送をどうするかをケアしていかないといけないですね。あと、競技用具類もなんとか揃えていかなくてはいけないですね。逆にまた今回、初めて海外選手を受け入れたこともいい経験になりました。なにせ、準備期間4か月で形になったのも、もう、とにかく、関係者みなさんの協力があっからです。そのおかげで、「次もできそう」という手応えを感じています、ほんまに。世界規模の大会を運営することなんて、この先、自分もきっと、もうないでしょうから、まぁ不安に襲われる時もありますが、仕事としては・・・実は、楽しいです(笑)←小声。今回の経験を、また、来年のリハーサル大会、そして本大会につなげていきたいです。

 

 

 

取材を終えて・・

 

清水さんにお話を聞きに行ったのは、第1回音水湖カップの2日目。ご本人に会うまで、「ただでさえ大会準備でお忙しいのに、インタビューの時間なんて割いてもらって、申し訳ないな」と少しおびえていました。しかし、清水さんは終始ニッカニカの笑顔で、言葉には一切ネガティブなところがありません。なんでだ‥?インタビューの最後、「でも、実は楽しい」の一言。そうか、楽しんでいるからか。言葉通り、東奔西走しながらも“楽しんでいる”というのは、自ずと表情に出るもんなんですね。

「試合当日に余力を残すのも、運営側として大事なことだ」と清水さん。実は、13年前、のじぎく兵庫国体でスラロームワイルドウォーターという競技を受け入れた経験がありました。「当日は、自分は本部から動かない。自分がうろちょろ走り回って肝心な時に不在にしていたら、それは、うまく運営できてないということ。前日までに準備を仕上げるのが自分の仕事」とノウハウを見事に生かしています。

 

選手にお礼を言われている清水さん

 

何度も口にされた「みなさんの協力なくしてできない」という言葉。関係者みんなで作ってきたというのも当然あるのでしょうが、「きっと、必要な時に助けてもらえる人間関係を、清水さんが築いているからなんだろうな」と感じました。

取材・構成 兵庫県広報専門員 清水奈緒美

 

 

 

【 カヌーポロとは? 】

 

カヌーポロ日本代表監督 長利智隆さん

1チーム5人。一人乗りのカヌーに乗って、水球のボールをゴールに入れ、得点を競うスポーツ。前・後半10分、計20分。

 

<ゲーム基礎知識>

・試合開始で、コート中央に投げ入れられたボールを両端から選手が漕いで来て取り合う

・ゴールにボールを入れると1点獲得

・ゴール下でパドルを高く上げた選手がキーパーになる

〈主な反則〉

・パドルで手や身体をたたく

・危険なタックルや相手の服、舟(カヤック)をつかむ

・5秒以上ボールを保持する

・ボールを持ったチームは60秒以内にシュートをしなくてはならない

 

 

 

 

見たらすごいよ!カヌーポロ

兵庫県広報専門員 清水

水しぶきを上げながら、“ガッコガコ”カヌー同士がぶつかり合って、激しいポジション争いをします。時に、舟(カヤック)ごと回転して選手が水中にもぐってしまって、一瞬「うわっ」と反応してしまいます。あっという間にゴールが決まったりと、試合運びが早いので、うかうかしてられません。「こっちー!」と、かけ声が上がったり、「ウォーー」とか雄叫びを上げる選手もいたりして、生で試合を見るのが、ここまでおもしろい競技だとは。試合時間20分・・もっと見たい。

 

 

 

 

日本代表のココがすごい!

カヌーポロ日本代表監督 長利智隆さん

ボールを奪われないための、パドルさばきやボールコントロールがすごい。正確なパス回し、ポジション争いで負けないパワーやスピードに加えて、変化に富んだシュートが打てる。日本のチームも今、レベルが高くなっていて、日本代表チームには、世界選手権で得点王になった世界レベルの選手もいますよ。

 

 

 

 

 

日本選手権4連覇中で、第1回音水湖カップ優勝の「佐倉インバース」(千葉)。日本代表選手も多く所属。

 


 

大会会場 音水湖情報
音水湖は、氷ノ山後山那岐山国定公園にあるダム湖。周囲を森林に囲まれ、氷ノ山の分水嶺から水が流れ込むため水質がよい。「音水湖カヌークラブ」では、カヌー、SUP、シャワークライミングなどが体験できる。中国道山崎ICから国道29号線を鳥取方面へ約30km 車で45分。