WMGを作る人
2020/12/22
「ワールドマスターズゲームズ2021関西 ビーチバレーボールリハ大会」のエキシビジョンマッチで、ビーチバレーボール・オリンピアンの佐伯美香さんとペアを組み、試合をしたのが、南あわじ市職員の西岡幸子さん。佐伯さんとは、ユニチカ(株)バレーボールチームで共に汗を流した仲です。
現在、市役所職員としてワールドマスターズゲームズの開催準備を進めていますが、日本代表選手として数々の世界大会を経験した西岡さんだからこそ描く大会像がありました。
清水 西岡さんは、アスリートから一転、今は市役所で働かれているんですね。
西岡 私は、南あわじ市の出身なんですけど、「現役を引退したら、地元に戻ろう」っていう思いがあったので帰ってきました。もう、30年近く前になりますけど。
清水 であれば、のじぎく兵庫国体(2006年開催)とかも、関わったりされたんですか。
西岡 そうですね。すでに市役所には入っていて、あの時も、ビーチバレーで関わらせてもらって。私は、試合の解説みたいなことも少しやらせてもらいました。
清水 ワールドマスターズゲームズの準備は、どういったことからされてきたんですか。
西岡 まずは、「南あわじでビーチバレーをします」という申請からですね。南あわじバレーボール協会の冷水さんたちが、「ぜひ、わがまちで」という気持で、競技の運営事務局としていろいろなことを引っ張っていってくれているので、本当に助かっていますし、そこは安心しています。
清水 今日の大会でも、冷水さんたち事務局のみなさんの仕事っぷりはすごいですもんね。
西岡 はい。でも、自分としても「まさか、地元で国際大会が開催される」とは思っていなかったので、本当に「びっくり!」という感じす。体育館も何面もコートが取れるわけではないので、全日本の大会を開催するのもなかなか厳しいところ、いきなり「世界大会」ですから。でも、WMGは“楽しむ大会”でもあるので、競技大会よりはピリピリしないのかなとも思います。
清水 今日はいろいろな感染症対策もされていましたが、大会準備は大変ですか。
西岡 感染症対策はもちろんしていくんですが、実はビーチバレーって、意外に人手がいるんです。
清水 え、そうなんですか。
西岡 でも、淡路のバレーボール協会って、本当にすごくって、高校バレー部顧問の先生方が中心になって、小中学校の先生たちや一般の方々も熱心に集まってくださいますし、ここ数年開催しているリハ大会でも、淡路全域の高校バレー部が集まって、準備してくれてるんですよ。
清水 準備って、そんなにかかるんですか。
西岡 ビーチバレーは穴を掘ったり、砂浜にラインを引いたりするところからして、後片付けもありますし。でも、大人だったらヘットヘトになってしまうようなことも高校生がササッとしてくれるんです。
清水 そのおかげで、今日、砂に足を入れたら、ふっかふかでしたもん。
西岡 自分もいろいろな世界大会へ行きましたけど、コートはもちろん、すでに完成しているし、試合をして帰るだけなので、準備でどんなことをしていたのかは知らなかったんです。でも。「コートもきっと何日も前から準備されてたんやろな」「大会をひとつしようと思ったら、これだけ大変なんだ」と思いましたね。もっと感謝せなあかんかったなって。
清水 市として準備にあたっていることは、どんなことですか。
西岡 今、話し合っているのが、交通手段です。鳴門の渦潮とか見てもらいたいなぁと思いますし、イングランドの丘も楽しんでもらえると思うんですけど、バスが1時間に約1本しかなく、車がないと不便なので、交通の便をどうするかなというところです。
清水 確かに、そうですね。アジアパシフィックマスターズ大会でマレーシアに行った時、私も交通が不便で「ちぇっ」と思って(笑)。でも、ロードバイクを持って行っていたので、自分の自転車でぷらっと街中を観光してましたよ。
西岡 ナイスですね。
清水 1年半後、WMGでは、初めて南あわじに来る方もいらっしゃるでしょうね。
西岡 各地から人が来るでしょうから、「特に平日のボランティアをどう確保するか」とか、まだまだ考えないといけない部分はありますけど、でも、「いかに南あわじを楽しんでもらうか」。そこが一番の考えどころですね。
清水 おもてなしの部分ですか。しかも今、コロナ禍で感染症対策も考えていかないといけないですし…
西岡 コロナ禍で、どれだけの人数に来てもらうかによっても、おもてなしの部分も、「どうやってやろうか」「どこまでやれるのか」ちがってくると思うので、今、企画もストップしている状態ですね。
清水 どういうものを考えておられたんですか。
西岡 “日本のお祭り”みたいな雰囲気でできたらなと思ってたんです。周辺に飲食店が少ないので、たこ焼きとか、お好み焼き、かき氷のブースも出してタマネギをふるまって。淡路瓦をあしらった舞台みたいなスペースがあるんですけど、そこで、トランポビクスしてもらったり、和太鼓の演奏があったり、海外の方には浴衣を着てもらって、みんなで盆踊りをして花火がポンッとあがったり…。ここ屋外だから、いろんなことができますよね。
清水 まさに、日本の夏ですね。
西岡 夜に飲みに行ったりするところも近くにはないですし、どうしたら、日本のおもてなしのあったかさを感じてもらえるかなと。
清水 慶野松原は夕日も有名ですし、夕日のなかでビーチバレーができたらよくないですか。
西岡 そう!でも、ナイター設備がないので、夕方の試合はできないんです(笑)。ただ、この辺りの浜辺の遊歩道には、旅館さんが照明を付けたので、夕方のムードはいいと思いますよ。
清水 西岡さんのイメージする大会が少し分かってきました。
西岡 私も、いろいろな世界大会に行って、「あそこの国は、景色がきれいだった」とか、良いところも悪いところも今も覚えているものなので、WMGは、来てもらった人の思い出に残るような大会になったらなと思います。
清水 長い目で見た時に、このWMGに期待することは、どんなことですか。
西岡 「南あわじ市に、これだけのビーチバレーコートがある」ってことを知ってもらう一番のチャンスですから、いろんな人に知ってもらって…。泊まるところはたくさんあるので、ゆくゆくは、ビーチのトップ選手が合宿に来たり、大会が開催されたり、そんな風にビーチバレーで南あわじが盛り上がっていってほしいと思います。
この日、会場のひとつになっていた体育館をのぞくと、西岡さんと元全日本男子バレ-の山本隆弘さんの写真を見つけました。アスリートとの交流やスポーツ指導を通して、子どもたちに夢について考えてもらう事業での招待とのことですが、「西岡さん、こんなこともされてきたんだ」と普段のお仕事ぶりを垣間見た気も。
夢の芽が芽吹くには時間がかかるのと同様に、南あわじがビーチバレーでにぎわうにも、きっと時間がかかるでしょう。でも、参加者にとって“思い出に残る大会”のその先には、“ビーチバレーの聖地=南あわじ”というビジョンも見えてくるのではないかと思います。西岡さんのような「世界大会を見て来た」という心強い視点と、島内全域の支えがある“チーム・南あわじ”なら、きっと。
取材・構成 兵庫県広報専門員 清水奈緒美