KANSAI WORLD MASTERS GAMES 2021

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WMGを作る人

2020/10/08

vol.04 「どんな国なの?」多文化理解とフラッグフットを知るきかっけに ~日本フラッグフットボール協会 鴨谷真さん~

2020年度からバスケットボールなどと並んで小学校の学習指導要領に新たに掲載されたスポーツが、フラッグフットボールです。

来年のワールドマスターズゲームズ(WMG)では、オープン競技として開催されますが、本番まであと1年というところでコロナ禍へ。1度は延期したフラッグフットボールのリハーサル大会は、できうる感染症対策を施したうえで開催となりました。
運営団体として準備をすすめてきた鴨谷さんに、その胸中を聞きました。

 

そもそも、フラッグフットボールとはどんなスポーツなのか

清水 フラッグフットボールの歴史は、どういうものですか。
鴨谷 1970年~80年頃にアメリカで生まれたスポーツで、当時は学校の先生たちが「これは教育的な側面が強い」と普及のための勉強会などをしていたようです。99年にNFL(National Football League)が世界的に普及させようと動いて、日本へも紹介されました。
清水 どういう人がプレーしているんでしょうか。
鴨谷 大きく分けて、小学校の授業で習ってフラッグフットを知る子と、大学くらいまでアメフトをやって、社会人になって転向する人たちがいます。小学生でいうと、年間だいたい40万人くらいの子たちがプレーしていると思います。
清水 社会人のフラッグフット愛好者はどれくらいいらっしゃるんですか。
鴨谷 そうですね、日本フラッグフットボール協会主催の大会参加者が4,000人ほどですが、社会人はそのうち1,500人ほど。もうひとつ、別のフラッグフットボールの大会組織で試合をする人もいらっしゃるので、1,500人よりもう少し多くの愛好者がいらっしゃるかと思います。年齢も幅広くて、子どもたちもいれば70代くらいの方もいらっしゃいます。

 

これからの課題は、指導者を増やすこと

清水 これから、競技人口を増やしていこうと?
鴨谷 試合の数は多くないので、そこは増やしていかないとと思いますが、「競技人口をすぐに増やそう」ということでもないんです。
清水 あ、そうなんですね。というのは…
鴨谷 例えば、バスケは戦後すぐに学習指導要領に載ったんですけど、当時は先生たちも指導方法は手探りだったスポーツが、教え子が大きくなった頃には誰もが知っているスポーツになっていたんです。今、指導要領にはサッカー、バスケ、ハンドボールなどと並んでフラッグフットが掲載されているので、体育の授業でフラッグフットを知る子たちがさらに増えていくと思います。実は、「フラッグフットボールを教えられる人」を増やすことの方が急務ですね。
清水 なるほど、確かにそうですね。
鴨谷 指導者の育成のために少し前から、関西学生アメリカンフットボール連盟に所属する学生が、学校の先生方を対象に講習会をしているんです。「○○地域から講師派遣の依頼があった」「近くの○○大学の学生が向かいます」という風に、関西全体で依頼を受けられる仕組みです。学生が指導者育成のお手伝いをする、それも関西全体で-。これができているスポーツは他にはないのではないかなと思います

 

 

教育的に注目。PDCAサイクルを実践するスポーツ

清水 「教育的な側面が強い」というのは、どういうことですか。
鴨谷 フラッグフットはPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを実践するスポーツなんです。基本的に、「プレーブックで立てた作戦に従ってプレー、その結果を検証して次のプレーに生かす」この繰り返しです。「守備に隙ができたから、その一瞬の隙をついて攻める」とか「力で押しのける」とかは少ないですし、ほかのスポーツでも作戦は大事ですが、フラッグフットは作戦がよりものを言うスポーツです。
清水 なるほど。身体能力だけではないと…。
鴨谷 以前、私は神戸市に拠点を置く(株)ワールドに勤務していたんです。そこにラグビー部があって、当時はなかなか強豪チームだったんですよ。そこでラグビーをやっていた仲間が引退して、フラッグフットをしてみたら「これは、なんておもしろいスポーツだ」って言うんです。頭を使って作戦立ててするのが、おもしろいんですって。
清水 アメフト、ラグビーと似てそうですけど、またちがう魅力のスポーツなんですね。
鴨谷 そうですね。あとね、フラッグフットを覚えると、子どもたちが「スポーツって頭を使って勝つこともできる」って知るんです。そうすると、自ずと他の競技もうまくなるっていうことがあるんです。
清水 えっ。
鴨谷 小学生に、プレーの中で「自分の役割は何か」を聞くと、「相手チームの守備を引き連れて、あっちに行くこと」と答えるんです。それで、正解です。「じゃあ、どうやって、前の人を引き連れて行くの?」と聞くと、「わざとゆっくり走る」とか「『こっち!俺、俺―!』と声を出してみる」って答えるんですよ。また、作戦に加えて、時間の使い方も鍵で、「時間をうまく使って、どう終わるか」。試合時間ラスト1~2分は、みんな、頭の中、煮えくりかえっていると思います。

 

 

人との交流。それが阻まれるのが一番辛いです

清水 今回の大会運営でも、いろいろコロナ対策をされてますよね。
鴨谷 参加者は2週間前からの健康チェック、マスク着用、試合球は新品使用など、考えうる対策を講じての開催となりました。万が一、クラスターが出たら、「では、どこがリスクだったのか」を検証していって、来年の本大会は最高の状態で迎えたいと思っています。今日の大会は、運営のリハーサルであると同時に、“Withコロナ時代”の感染症対策のリハーサルでもあったように思います。

鴨谷 ただ、今回のWMGでは、競技を競い合うだけではなく、参加者もその家族も、いろいろな人が集まって交流するというのが醍醐味なだけに、海外の方が来られないとなると…辛いですよね。運営の準備をやればやるだけ、いい大会になるならどこまででもやりますが、そもそもの「人との交流」というのがコロナで自粛しないといけない。そこは一番辛いですね。
清水 今日も海外選手が来るはずだったんですよね。
鴨谷 そうですね。アメリカ、韓国、中国、台湾から来る予定でした。今日の大会のためだけではないですけど、自分も韓国に行って指導方法を教えたり、アメフトの審判の講習会に行ってお手伝いしたりと、海外の団体と関係を作ってきたつもりです。それが太いパイプになっていって、去年もリハーサル大会を日本で開けば、韓国の選手が来てくれたりしたので。そういうのは、大切にしたいですよね。

 

「どんな国なの?」。
多文化理解とフラッグフットを知るきっかけに

清水 ところで、国際大会の運営準備で、大変なことはありますか。
鴨谷 大会規定などを多言語で配信しないといけないのは、大変だなぁと思いました。その「大変だなぁ」という真意は、「いい勉強になるな」ということなんですけど。
清水 すごく、鴨谷さん、前向きですね(笑)。
鴨谷 英語を覚えないといけないと思って、2年ほど前から英語のCDを買って勉強し出したんです。そうするうちに、各競技の運営団体にポケトーク(音声翻訳機)が配られたので、勉強はやめちゃったんですけど。

清水 WMGを通して、期待していることはどんなことですか。
鴨谷 ひとつは、地域の連携が深まったらいいなということ。ひとつは、海外へ目を向けるきっかけになればということ。そして、もっといろいろな方にフラッグフットの魅力を知ってもらえたら・・と思っています。
清水 地域の連携を深めるというのは。
鴨谷 例えば、フラッグフットボールの開催地は神戸市内の王子スタジアムというところですが、会場周辺の商店街などでも、大会を盛り上げる動きが活発になっていけばと思います。それから、例えば、海外の選手とお話したり、試合後にみんなでご飯に行ったりして「どんな国なの?」とか、そういう会話から、異文化への理解とか貧困問題とかを考える機会になるんじゃないかなと思うんです。「大会やって、参加者だけがお祭り騒ぎして、終わって収束」…では、やっぱりちがうと思うんです。
清水 そうですね。スポーツを通して、地域や参加者につながりが生まれることも、大会に期待されることですし。
鴨谷 WMGへ参加する海外の方には、「また、日本へ行きたいね」とか、そんな風にリピーターになっていってくれたらうれしいです。そして、フラッグフットボールに携わる身としては観客の方たちにもフラッグフットのおもしろさを知ってもらって、フラッグフットボール文化が広がっていくことを期待しています。

 

取材・構成 兵庫県広報専門員 清水奈緒美

 

 

【フラッグフットボールとは?】

1チーム5人。
ただし選手の交代が自由なのでベンチには15名以上入ることもある。
フィールドの大きさは、25ヤード×70ヤード(1ヤードは91.4㎝)。
前後半20分ずつの時間内に、多くの得点を取れた方が勝ち。

 

 

<ルール>
・攻撃チームは、自陣のゴールライン前5ヤード上から1回目の攻撃がスタート
・4回以内の攻撃でハーフラインを超える(再度4回の攻撃権を得る)か、相手チームのエンドゾーンまでボールを運ぶと得点が入る(=タッチダウン)。
・4回の攻撃でハーフラインを超えないか、タッチダウンとならなければ攻守交替
・1回の攻撃中に前パスは1回だけ可能

・守備チームはタックルの代わりに攻撃側のボール保持者のフラッグを取ると、その地点で1回の攻撃が終了。その地点から攻撃チームの次の攻撃を始める
・守備チームがパスを奪った場合、攻守交替(インターセプト)

・タックルや接触は反則となる
・プレーでは、ハドルと呼ばれる作戦会議を行う